mmmパター後編|ゼロトルクの真実と引っかけを防ぐCAD設計
※この記事はYouTube動画を元に構成しています
前回に引き続き、福島県にある「株式会社 山製作所(やませいさくしょ)」からmmmパター製造の裏側をお届けする工場潜入レポートの【後編】です。 (※前編『1ミクロンの超精密削り出し工程』の記事はこちら)
前編では1ミクロン単位の超精密削り出し工程に迫りましたが、今回はパターの命とも言える「CAD設計」や「重心コントロール」、そして最近話題の「ゼロトルク」に対する製造現場からのリアルな見解を深掘りします。精密部品加工のプロフェッショナルが、どのようにしてゴルファーの感覚を形にしているのか。そこには、驚くべき緻密な計算と職人の情熱がありました。
前編で案内してくれた片平さん・樋口さんに加え、後編では設計・プログラム開発のトップを担う白石さんにもお話を伺いました。
今回の結論:mmmパターは、データに基づく超精密設計と職人の探求心が生み出す、自分だけの打感を求めるゴルファーへの究極のアンサーである。
【後編】松坂大輔も愛用する削り出しパターの製造工程に潜入!【mmmパター】
【YouTube動画:21分05秒】
目次
重心を1mm単位で操る!mmmパターの超精密CAD設計
パター作りの起点となるのが、コンピューター上で図形を作成する設計。ベースとなる形状をもとに、社長やメンバーで意見を出し合いながら理想の形を作り上げていくのですが、そのプロセスは想像以上に精密です。
驚かされるのは、画面上で単に形を作るだけでなく、「重心位置」や「重さ」のバランスまで完璧にシミュレーションされていること。たとえば、「重いヘッドにしたい」と要望を出した場合、どこを長くしてどう削れば重心がどう変化するのか、上下前後のバランスを画面上の点(重心位置)でリアルタイムに確認しながら微調整を進めていきます。
引っかけの悩みはどう解決する?「トウハング」設計の秘密
「大事なパットでどうしても左に引っかけてしまう…」そんなスコアに直結するゴルファーのリアルな悩みに対しても、感覚で対応するのではなく設計の段階からアプローチ。 重心をトウ側に持ってくる「トウハング」という設計を用いて、フェースの開きの部分をどう調整するかをデータに基づいて考え抜いています。この緻密な計算こそが、構えたときの安心感と理想の転がりを生み出す源泉なのです。
JSSとGSSの決定的な違いとは?極上の打感を生む素材選び
削り出しパターにおいて、素材は打感や打音を左右する超重要項目。高級パターの代名詞とも言えるGSS(ジャーマンステンレススチール)が有名ですが、mmmパターでは同等の成分を持つ国産のJSS(ジャパニーズステンレススチール)なども研究・採用しています。
今回パターの要となるプログラム作成と設計を担う白石さんは、成分表を見比べながら「どこがどう違うから、この仕上がりになるのか」を日々研究。素材の成分によって削った際の仕上がりが変わるのはもちろん、数値上だけでは測れない「人の感じ方」の差をいかに表現するかが、モノづくりの大きなテーマだと語ります。
打感を左右する隠れた要因「削るスピード」への異常なこだわり
極上の打感を生み出すためのこだわりは、素材選びだけにとどまりません。ただ機械で削るだけでなく、工具の持ちや材料の変質を防ぐために「削るスピード」まで細かく指定しているというから驚きです。 反りや曲がりが出ないよう速度まで厳密にプログラム化し、ゴルファーの感覚的な声をデータと加工技術に翻訳していく。まさに職人技と最新テクノロジーの融合です。
流行りの「ゼロトルク」パターの真実|製造現場からのリアルな声
最近のパター業界で一大トレンドとなっている「ゼロトルク」設計。シャフトを水平に支えた際にフェースが上を向くこの構造について、製造の最前線からのリアルな見解を伺いました。
完全なゼロトルクは可能か?あえて「ロートルク」と呼ぶ理由
現場の設計視点から見えてきた「ゼロトルクの真実」は以下の通りです。
- 物理的な実現は可能:ウェイト位置の微調整やシャフト角でバランスを取れば、ゼロトルクに近い状態は作れる。
- 完全な「ゼロ」調整の難しさ:素材ごとの個体差や製造誤差がどうしても存在するため、構造上、完璧な「ゼロ」に揃えるのは極めて困難。
- 現場のリアルな表現:あえて「ロートルク」と表現するメーカーが増えているのは、モノづくりの限界と誠実さの表れである。
他メーカーのパターでウェイトの取り付け位置が多かったり、シャフトの角度でバランスを取っていたりするのはこのためです。流行りの言葉に踊らされることなく、職人としてのリアルな声を聞けたことで、パターの構造に対する理解がさらに深まりました。
反射を防ぐブラスト加工と3Dレーザー刻印|究極のカスタム工程
削り出したピカピカのヘッドを、さらに実戦向けの極上パターへと昇華させるのが表面処理の工程です。ブラスト機と呼ばれる機械の中で細かいガラスビーズを吹き当てることで、艶を消してマットな「梨地」へと仕上げていきます。これにより太陽光の反射を防ぐだけでなく、打感や打音にも微妙な変化をもたらすというこだわりの作業です。
1本に20分!妥協なき3Dレーザー刻印の3ステップ
さらに、ソールやバックフェースへのオリジナルデザインのレーザー刻印も3Dで制御されています。1本のパターへの刻印は、驚くほど慎重なステップを踏んでいました。
- 3D精密位置決め:「YMP-P03(ワイエムピー・ピーゼロサン)」をはじめとする各モデルの曲面(R)や傾きに合わせてパソコン上でデザインを完璧に配置。
- 赤色光デモンストレーション:本番前に赤い光を当てて実際の見え方やズレがないかをテスト。
- 本番のレーザー刻印:ソールで約20分、バックフェースで5〜10分と、じっくり時間をかけて刻み込む。
Excelで気軽に送ったデザインが、これほどの手間暇をかけて仕上げられているとは驚きです。1本1本がまさに職人の情熱が詰まった作品であることが伝わってきます。
」と「圧倒的な時間」、そして「妥協のない設備投資」という明確な理由があったのです。
総評|mmmパターが「自分だけの1本」になる理由(試打・店舗情報)
前編・後編にわたってお届けしたmmmパターの工場潜入レポート。1ミクロン単位の削り出しから始まり、緻密な設計、素材ごとの打感の追求、そして細部へのカスタマイズと、1本のパターにかける異常なほどの情熱と途方もない時間がそこにはありました。
「削りの専門家」だからこそできる精密設計と、ゴルファーの声をすぐに反映してくれるフットワークの軽さ。現在もカラーバリエーションを追加したアルミヘッドのネオマレット型など、新モデルを鋭意開発中とのことです。 この職人魂が詰まったmmmパターは、4plus市ヶ谷店・東宝調布店にて試打やフィッティングが可能です。ミリ単位の精度で作られた自分に合う1本を、ぜひ店頭で実際に体感してみてください。
【加工情報まとめ】
※動画で言及された加工情報のまとめとなります。
- 設計:3D-CADによる重心位置・重量バランスの精密調整
- 素材:JSS、GSS等
- 表面処理:ブラスト機による梨地加工(ガラスビーズ使用)
- 刻印:3Dレーザー刻印(ソール約20分、バックフェース約5〜10分)
- 最新開発情報:アルミ素材を採用したネオマレット型モデル(新色)